ベンチャー企業で働く学生のブログ

東京のベンチャー企業でインターン中。就職活動やキャリア、読んだ本、ニュースなどについて、日々考えたことを発信していきます。読者登録はお気軽にどうぞ。

ベンチャー企業や起業の意義とは?(『会社はこれからどうなるのか』読書録)

最近学生の間でも、ベンチャー企業への就職や起業がキャリアの選択肢として考えられるようになってきたと思います。かくいう私もベンチャー企業インターンをしています。(もちろん一概にすべてのベンチャー企業に当てはまることではないでしょうが、)働く個人にとって、ベンチャー企業で働くことは、働きがいや成長などにおいてとても良い選択肢であると思います(今回のメインテーマはこれではないので、省略します。「働きがい」「成長」とか無思考感があってあまり好きな言葉ではないですが、とりあえずわかりやすいので笑)。一方で、社会や経済にとっても、ベンチャー企業が成長すること、新しい事業や企業が立ち上がること(新規事業創造・起業)は意味あることなのです。今回は、単なる風潮としての「ブーム」ではなく、経済や産業といった視点から、ベンチャー企業が成長すること、新しい事業や企業が立ち上がることの意義について考えてみたいと思います。

なお以下は、経済学者である岩井克人氏の『会社はこれからどうなるのか』を参考にしながら書いています。もっと詳しく知りたい方はぜひ読んでみてください。

 

会社はこれからどうなるのか (平凡社ライブラリー い 32-1)

会社はこれからどうなるのか (平凡社ライブラリー い 32-1)

 

 

1. 資本主義とは―起業・ベンチャー企業を考える前に―

 本書では、資本主義を「利潤を永続的に追求していく経済活動」としています。そしてその起源は、ある場所で採れる黒曜石を、黒曜石の採れない地域で販売するというように、価値の差異(この場合、後者の地域の方が黒曜石の価値は高い)を利用して利益をあげるといいう「交易」になります。差異を媒介して利益を生むことが資本主義の原理であり、これは現在に至るまで変わることのないものです。

 

2. 近年の三大変化

 先述した通り、資本主義における企業活動とは、差異性を創ることで利潤を追求することです。しかし資本主義とは、企業が差異を生み出そうとすればするほど差異を生み出しにくくなるという自己矛盾的なシステムであると主張しています。それは、近年では「IT革命」「グローバル化」「金融革命という3つの大きな”時代変化”に代表されます。

 IT革命が可能にしたのは、情報格差そのものを利用したビジネス、すなわち、(主に)インターネットを通じて顧客に情報を提供するビジネスです。つい最近とあるウェブサイトが炎上しましたが、情報を持っている人が、持っていない人に対して(それも理論上全世界の人に対して)情報提供することを可能にしたのです。

 グローバル化は、ヒト・モノ・カネ、情報の移動が技術的に容易になったことがその要因だと語られがちです。もちろん技術がグローバル化を後押ししたのは確かですが、そもそもグローバル化を推し進めた思想こそが資本主義(差異性の追求)だったのです。それはもちろん、低賃金労働者を雇うことでコストダウン(他社との価格差異の追求)を目指す取り組みが代表的でしょう。

 もう一つが、金融革命です。時間や空間やリスクに対する考え方など好みや必要性の間の差異性を利用して、カネそのものによって利潤を得ようとしたのです。 

 

3. 産業の新陳代謝の必要性

 しかしそれでも、顧客の数の頭打ち(グローバル化とはいえ限界がある)、コストダウンの限界などにより、差異性の追求は限界を迎えつつあります。例えば事業撤退とは、企業経営の問題とすることもできつつ、産業構造の問題でもあるのです(例えば三菱重工の大型客船事業の撤退)。

 既存事業において利益を生み出しづらくなってきている(それは賃金の減少、雇用の減少、経済の衰退などをもたらす)状況の中で必要なのは、新たなサービス・商品の創造です。

一国経済の立場からは、古い会社が市場から撤退していくのに応じて、新しい会社が市場に参入してこなければ、これまでの雇用が維持できません。さらに、参入した新しい会社が十分に利潤を生みだしていかなければ、これからの投資資金も生まれません。会社全体の新陳代謝が円滑におこなわれることが、一国経済にとって死活問題となっているのです。

(『会社はこれからどうなるのか』P.333-334)

 そしてその役割を担うのが、新産業の中で成長を目指すベンチャー企業に他ならないのです。このように、経済という視点から考えてみても、ベンチャー企業や起業という形で新産業を創出することは意義あることなのです。就職とは、自分という身を社会へ投じること。自分は社会をより良くするために、どのような意思決定をしたいでしょう?この投稿も参考にしながら考えてみてください。